金曜日23時神楽坂
「寂しいんだよね」
前触れ無く突然手元をみて呟く彼の顔が色っぽくて。それは私だけの。私だからこそだと。暴力的にも思ってしまうのだ。
「絶望したとかそんな大それたことじゃない。なんかさ。怖いなって。思ったりする]
彼のその煮え切らない語尾も。悪くない。
だけど。私達はきっと。寝ない。敢えてじゃなくて。でも、きっと意識的に。
私も彼も。自分のずるさを知りながら。この夜を過ごしてる。
いつか終わりを迎えるっていう最大の絶望を共有できないのが最愛の人だとして。でも。それがそうであるべきなんかじゃなくて。きっと私だって。そうで。だから。だからこそ。この絶望を一瞬だけ共有できる。約束のない。この距離を愛してしまう。
誰かと秘密を分け合い。誰かと約束を交わす。それはきっと永遠なんて幻想にとりつかれてる愚か者ゆえの暴走で。だけど私は暴走したまま逃げ切るしかないことだって分かってる。だからね、彼が色っぽいと思える私をどうか最後まで馬鹿にし続けてください。
いつだって。最後だって思いながら。彼の「ちょっとそんな気分でさ」って言葉をまた待って。「私も」って。たまたま気が合うよね。私達って何か超越した感じ。分け合ってるよね。なんて。演じちゃって。
愛することの意味なんて。私どうでもいい。